再会

「勝、しっかりしろ!」
ステーションから脱出し無事着水したシャトルに、フウのメイド人形を従えた鳴海が駆け込んだ。
一番早く助けに行けそうな機体は乗員数に限りがあり、万能なメイド人形以外には鳴海が一人で乗り込んでいた。
コックピットの中で、サイズの合わない宇宙服に身を包んだ勝が気を失っている。
メイド人形が宇宙服の生命維持装置を確認し、鳴海が宇宙服ごと勝を抱きかかえヘルメットを外す。
「…あ…、ナルミ兄ちゃん…?」
勝が薄く目をあけ、弱々しくつぶやいた。
「よくがんばったな、勝。」
鳴海が愛おしそうに目を細め、静かに勝に話しかける。
「すぐに安全な場所に連れてってやるからよ。」

「兄ちゃん!?本当にナルミ兄ちゃんなの!?ボク本当に帰ってこれたの?夢じゃないの!!」
軽いパニックに襲われて、勝は体を震わせ細く叫び続けた。
「あぁ、ちゃんと俺に言った通り帰ってきたんだよ、お前は。
 もう大丈夫だ、俺が付いてる。だから今は眠ってな。
 次に目が覚めたら皆がお前を迎えてくれるから。」
鳴海は勝の頭に顔を寄せ、その心に届くよう祈りながら言って聞かせる。
顔をなでてやりたいが、今、自分の手に人のぬくもりは無い。
鳴海には、だた勝を抱きしめるしか術が無かった。

小さく震えていた勝の体がふっと静かになった。
鳴海の気持ちが届いたのかその瞳に光が灯る。
「ナルミ兄ちゃん…僕を迎えに来てくれたんだね。」
小さいがしっかりした声で勝が言った。
「そうだ。俺がお前を迎えに来ないでどうする?お前は俺の大切な弟なのに。」
そう言って鳴海は太陽のように明るい顔で笑う。
勝もつられて破顔する。
それは鳴海の知っている最高の笑顔。

「さぁ、今からヘリに向かうからな。しばらく静かにしててくれよ。
 しゃべっててお前に舌でも噛まれたら、しろがねに怒られちまう。」
勝の体をフックに固定しながら鳴海が言う。
「兄ちゃん、もう、いなくなったりしない?ずっとしろがねの傍にいてくれる?」
安心して、また遠のきそうな意識の中、勝は鳴海に問い掛けた。
鳴海は真剣な目で、でも口の端を少し持ち上げてみせ、勝に言った。
「もちろんだ。もう二度と離れねぇよ。」
勝の脳裏に浮かぶのは幸せそうなしろがねの笑顔。
「よかった。…僕、兄ちゃんに話したい事がいっぱいあるんだ…」
「俺もだよ、勝。」

鳴海の答えを聞きながら勝は再び眠りに落ちていた。
それは悪夢にうなされていた今までの眠りではなく、優しい眠り。
近くに鳴海の存在を感じながら、勝は今までで一番幸せな夢を見ていた。
それは自分や鳴海やしろがね、大好きな仲間達、
そして今は遠くにいる優しい人たちの、幸せいっぱいの、笑顔。

2007.7.6

見たかった。見たかったっすよ!鳴海と勝の感動の再会シーンが!!
ひどいよ藤田さん(TOT)
そりゃあーゆー演出方法も分かりますが、9年かけたんだもんね…
つきあってた皆さんは欲求不満がたまったろうと思います。
鳴海にとって勝は弟で、勝にとって鳴海は兄なのに、
最後は金銀との対比のための設定になってたのがサミシイ…