「もう一時間も出てこない…。」
勝はイライラと爪を噛む。
「そんなに心配しなくても大丈夫だからよ。あいつは俺たちの中で一番長く戦ってるんだぜ?」
落ち着いた顔で鳴海は勝を諭す。
「でもさ…。」
「こういう事はよくあるんだよ。今回はお前がいたから付いてきてもらったけど、本当は俺もいなくていいくらいだろ。…信じてやれよ。」
女性用のスパリゾートにオートマータが入り込んでいると情報を得て、しろがねが一人で施設に潜入していた。
鳴海と勝は施設の外で、万が一の場合に備えて待機している。
「なるべく穏便に事を進めたいからな。あいつ一人で片がつくなら越した事はねぇ。」
「そりゃそうだけどさ…。」
イライラが頂点に達した勝は思わずタバコに火をつけた。
「…あっ。」
大きな手が勝の口からタバコを奪い去る。
「吸うのは勝手だが、オレの前では止めとけや。しろがねの前では吸わねぇんだ。ガマンできるんだろ?」
ニヤリとして鳴海が言った。
「…チェっ、わかったよ。」
自分の頭より遥か上空にある男の顔を上目で睨み、勝はライターを片付けた。
「だいたいお前、まだ未成年……」
どおぉぉぉん…。
「なっ…!」
鳴海のお小言が始まりかけたその時、彼らの後ろで大きな爆発音がした。
「待たせちゃってごめんなさい。少し手こずってしまって。」
振り返ると涼しい顔でしろがねが立っていた。
爆発で施設はほとんど全壊している。
「ふぅん、『穏便に』ね。」
ニヤニヤして勝が言う。
「何か言ったかマサル。」
鳴海は横目で勝を見やる。
「いーえ、何にも言ってマセン。ナルミ兄ちゃん!」
そう言って笑いながら勝は先に立って歩き出す。
「従業員の皆さんやお客さんには先に逃げてもらったんだけど。…何か問題があった?ナルミ。」
二人のやりとりにきょとんとした表情でしろがねが言う。
「いいや、何にもねぇよ。ご苦労さん、しろがね。」
そんな彼女に鳴海は笑顔で答え、二人は並んで勝について歩き出した。
2007.8.18
本当は内心鳴海もしろがねが心配なんでしょうな(笑)
でもやっぱり鳴海としろがねの絆は強い訳です。勝が入る隙も無いほどね!
タイトルはthee michelle gun elephant「いじけるなベイベー」より。
※日記で自分の書いた物を振り返るのが面倒になってきたのでこっちに移しました(笑)。2009.1.22