8月16日の出来事
- 2012/08/28 20:10
- Category: 文::いただきもの
achikoさんがこの前書いて下さった小説を
ウチのブログで掲載してもいいって言って下さいました!!
きゃ〜嬉しい(o>▽<)o
大好きな大地君とジョーがウチに来てくれた〜
まったく遠慮しないで載せちゃいます!
achikoさん、本当に可愛くてステキなお話を
どうもありがとうございました(*^^*)
***
『8月16日の出来事』
written by achiko
「恋の女神に捧げるforet noire(フィレナワール)」
「・・・・ko...i?」
「恋の女神に捧げるforet noire(フィレナワール)」
「・・・・誰にささげるって?」
木漏れ日と呼ぶにはあまりにも淡く、頼りない光。
「だーかーらっ”恋の女神!”にっ!が、今月の新作ケーキの名前!」
「・・・・・・・・誰が?」
濃淡のついた葉の重なりの隙間を縫うように通ったそれは、アスファルトに自分を主張する光を作り出すことはかなわず、はかなく熱風に揺れる輝きとなって散っていく。
「誰でもだよっ、捧げたいやつがみんな!」
「・・・大地も?」
「え?・・・あ・・・・m,もっちろんのすけ!!」
「・・・無駄だよ?」
切り絵のようにはっきりとした影の濃さが、今日の太陽の強さの証。
「なっ?!無駄って決め付けんなよっ人の恋の結果をかってに決めないでくれっ!よーっし!それじゃっオレは捧げまくってやるっす!いいかっジョー、オレは精一杯恋の女神に捧げてっ幸せを掴みとるため新作を売りまくって売りまくって売りまくってえええええっ!」
「がんばって売って叶うものかい?」
「ようは気持ちの問題だっ!ゲン担ぎ!おまじないっ!兄貴のケーキのすごさを証明してやる!」
「大地。結果はさ、・・・でてるだろ?」
冷たくもない迷惑なだけの嫌われ者となった風が、不機嫌さを訴える。
「結果なんていくらでも書き換えられるっ!(・・と思う)」
直接浴びる日差しが耳辺りにからみつき、鼓膜の奥まで日焼けしていく。
「書き換え、ね・・・。まあ、やってみたらいいよ、・・・がんばって」
夏の暑さにあてられて、フィジカルに勘違い。
だから、メンタルに勘違いしてしまっても仕方がない。
「え・・あ・・・・まさか、・・ジョー応援して・・・くれるっすか?」
恋の成就を願って熱く燃える太陽に、我が身をささげて叶うものなら、いくらでも!
「・・・あ、・・・・駄目だ。・・泣きそうになる」
「ちょ、ジョー?!」
灼熱の太陽よ、アポロンの翼を解かした熱で、この想いを灰屑と化して忘れさせてはくれないかっ。
届かない想いを翼にかえて、勇気を持って飛び立たせた先にまっているのは、何も手に入れることなく燃え尽くした形ない影だけだろうから。
すべてが影となって地上に墜ちる前に。
恋の女神よっ!
オレは、今あなたに、この、フランソワーズさんが「可愛い!!」とぞっこん惚れ込んでいる、泣き虫ジョーを捧げますからっ!
ちゃちゃっと誘惑してフランソワーズさんに振られちゃうようにしてくださいっ!!
そしてその後に、オレのこの切ない片思いを成就させてくださいっ!
「じょ、な、泣くようなことか?、あ、そうだっ・・・ら、来月の、来月のっ生ケーキの新作は1つだけで、あとは去年に出したのをアレンジするんだってさ」
角を曲がったところで、大通りへと出れば、オレたちの足が目指す場所までもう少し。
肩を落として頭を下げていたジョーが、おもむろにジャケットの内側からハンカチ・・ではなく、携帯を取り出した。
ーーー・・・おい、泣きそうじゃなかったのかよっ?!
「な、・・なにしてるんだよ?」
「・・・・ただのメール」
行儀がいいとは思えないけれど、オレジョーが携帯電話をあやつる見事な親指さばきを覗きこんだ。
「なぁ、どんなときでも声が聞ける方を選ぶじゃなかったっけ?」
ちらっと見えた、TO,のエリアにFの文字。
「・・・・メールでいい、よ」
「そんなに言いたくないか?」
メールを打ち始めたジョーの緩めた速度に合わせる、オレ。
「いや・・・そうじゃない。今、フランの声を聞いたら、・・・その、(涙を)堪える自信がないだけ」
「なっ?!」
うつむいて携帯電話に集中する姿は情けないはずなのに、・・なんでこいつは、こんなに憂いをともなう秋の香りを漂わせられるんだろう。
残暑の熱がまるで、照明のごとく演出されているとしか思えないくらいに、ジョーのまわりをキラキラときらめいて。
オレはジョーの隣で歩いていることがむず痒く。
意味もなく直射日光に当たるウナジ部分をガリガリと引っ掻いた。
「・・・・・俺はもう、さ」
文字パネルの上をすべっていたジョーの親指が止まった。
「?」
オレよりもほんのちょっぴり、だと思いたい身長差の分だけ、ジョーをみあげる。
「身も心もフランソワーズに捧げきって何もないんだ、だから・・、」
隣あって歩くよりも近くなったオレとの距離に、なにを照れる必要があるのか、琥珀色の柔らかな髪が、ゆれて、日本人っぽいけど、日本人っぽくない顔を隠した、彼を観た。
タレ目ぎみで、くっきりとした二重の綺麗なアンバー色の瞳の片方が、前髪に隠れてしまってなんだかもったいない気持ちにさせられる。
オレとの距離が問題なのか、それとも携帯電話を覗きこまれてフランソワーズさんのメルアドを知られることがイヤなのか、(ケチ!)居所悪そうなくちびるが、ごにょっと何かを呟いたのを、オレは聞く。
「捧げるより、・・恋の女神が、俺にささげろって・・・いう気持ち」
じーーーーーぃ・・と過ぎゆく夏を惜しむように蝉が鳴く。
ジョーっ!
お前はっ恋の女神までも虜にするのかーーーーーーーっ!
「お前っ泣きそうだって言ってたくせにっそんな不埒なことを考えてたのかっ?!いいかっジョー!フランソワーズさん以外の女性と浮気するなんてっオレが許さんっフランソワーズさんを泣かせるようなことはっ絶対にっぜーーーーーーーーーーーーっったいにさせないからなっ!!たとえ、相手が女王陛下だろうが、天使だろうがっ女神にっ人魚に、あーーっもうっフランソワーズさん以外はフランソワーズさんのためにも絶対にだめだっ!!!」
「うん、・・そんなことする気なんて、ないけど。了解」
「・・・・あ・・・れ?・・・ってオレ」
ーーー・・オレ、なんだか矛盾してないっすか?
***
ドアのチャイムが ちりりん っと鳴る。
今日も暑かった。
ジョーと駐車場前でばったり出会ってしまったから、余計にいつもよりも・・・体力を消耗したような気がする。
「いらっしゃいま・・、あら、大地、に・・あらら、島村っちさん♪も大地なんかと一緒だったんですか?いらっしゃいませ~!」
ーーー”大地なんか”とはなんなんっすか!義姉さんっ!
出迎えてくれたのは、オレの兄貴の嫁であり、バイト先の上司である義姉さんの接客慣れした声。
「今日は、フランちゃんはどうなさったの?」
「こんにちは。アイス珈琲、お願いします。・・出掛けにイワンがものすごくぐずってしまって・・・、すみませんが萌子さんのおすすめを箱に詰めてもらえますか?」
「はい、承りました♪・・・大地、お席にご案内したらすぐはいってよ!」
「ええっ!?バイトの入りまであと20分あるっすよっ!義姉さんっオレにもアイス珈琲くださーいっ」
「大地、ありがとう。・・ご馳走してくれるなんて、なんだか悪いな」
「ちょっとまて!オレはおごるなんて一言も言ってないぞ!」
「あら、たまには素敵なことをするのね?じゃあ、(バイト代から)引いとくから♪」
「義姉さーーーーーっ?!」
「さてっと・・・、電波が悪いみたいでなかなか送信できないみたいで。・・・電話をした方がいいみたいなんだけど、それならフランソワーズからも大地に礼を言ってもらった方がいいよな・・・」
「し、仕方ないなっ、き、今日だけだぞ!ジョー!」
まもなく始まるバイト前に、オレは”島村ジョーの彼女”に胸を高鳴らせながら考える。
終わりも結果もわかりきっている、永遠の一方通行でしかない片思い。しかも、なんでか恋敵であるジョーに、想い人であるフランソワーズさん以外の女性と浮気を許さない宣言するという、摩訶不思議なオレの片思い。
恋の女神も呆れ返って匙を投げ出してしまう恋だけれど、オレは・・・・
オレは、
「あ、そうだわ!島村っちさん、新作ね、さっき1個増やしたんですよ。フランちゃんに教えてあげてくださいねv」
「!」
「ふっふっふ、ジョー・・・電話ならその口でしっかりと新作の名前、言わないとな!」
オレは、・・頑固一徹、屈強のヘラクレス相手でもこの恋心、諦める気がしないっす!!
『もしもし?大地さん、こんにちは。』
「はい!大地っす!こんにちはっフランソワーズさんっ」
「大地、フランソワーズとの会話が強制終了されるまで、あと10秒、9,8.・・」
「?!あ、えっあっあのっそのですねっ・・ジョーっっお前っ」
「5,4,3,・・」
「すっすみませんっフランソワーズさんっジョーがっ!!」
「2,1,・・はい、終わり」
あああああああああああっっ!!!フランソワーズさああああっんつД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
end.
***