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こんな未来があってもいいんじゃないかと思って。

RE:がらみで湧いてきた攻殻的な未来に住んでる009たち、
を想像して文を書いてみました。
攻殻機動隊の素子さんが義体になる前くらいの社会状況の雰囲気で。
でも設定はデタラメです。
そして文章はむちゃくちゃ下手です\(^O^)/←ヒドイ
009ではそんなに書くことは無いと思うのでお許し下さい…。

出てくるのは1と3と9です。

***

『光の庭』
続き

フランソワーズが買い出しを終え、研究所の扉を開けた時、そこには見知らぬ子供が立っていた。
「おかえり、フランソワーズ。」
男の子は彼女にぎこちない笑顔を向けた。
彼の髪は明るいきれいなブロンドで、淡いブルーの瞳がフランソワーズを見上げている。
「あなたはジョーのお客様?出掛けていてごめんなさいね、すぐにお茶を用意するわ。」
自分の名を親しげに呼ぶ子供に違和感を覚えながらも自然な佇まいでそこにいる彼を、現在のこの研究所の主であるジョーの客であろうと検討をつけた。11〜12歳くらいに見える子供にこの研究所のセキュリティは突破出来ないだろう。ジョーが彼をここに招き入れたと思う方が自然だった。
子供のいるリビングを通り抜け、荷物を置きにキッチンに入る。
彼女は子供に笑顔を向けた。
「本当にごめんなさい。今日、お客様がある事を聞いてなかったの。」
「ボクはお客様じゃないよ、フランソワーズ。」
子供がそう言ってぎこちなかった笑顔を解き無表情につぶやいた。
「…ん、まだ表情筋を動かすのには微調整が必要だな。」
…この子は普通の子供じゃない。
子供の様子にフランソワーズは危機感を覚え、彼女は子供の「中身」を確かめた。
内心の動揺を抑え、ジョーに通信で連絡を取ろうとした時、研究棟の方からの足音と声がした。
「帰ったの?フランソワーズ。」
すぐにジョーがリビングに顔を出す。
「おかえり、フランソワーズ。彼はどう?この姿のイワンとは初めて会ったよね。」
そう言って彼は子供の両肩に手を置いて、彼女に微笑みを向けた。

ギルモア研究所の現在の所長は島村と名乗る壮年の男性だった。
実際はジョーとイワンで交代にその男を演じている。
ジョーとイワンで「島村博士」の義体であるアンドロイドを動かしているのだった。
イワンの昼の時間はジョーは彼の助手として活動し、イワンが寝ている間は彼が男を演じている。時おり他の仲間とも入れ替わり、周りの人間たちから見て不自然でないようにして、ここ十数年を同じ場所で過ごしている。
今は電脳化された人間が、義体で普通に街を歩いている時代だ。
彼らがここに居を構えた頃と違い、10年程度外見の変わらない人間がいてもそろそろ疑問をもたれなくなっている。

しかしこの研究所の住人が、100年以上の時を過ごしている事は誰も知らない。


「驚かしちゃった?イワンには今、子供の完全義体のモニターをしてもらってるんだ。」
そう言ってジョーはフランソワーズに笑いかける。
「ボクも共同開発者のひとりだしね。」
イワンはふたたびぎこちなく笑顔を浮かべて「声」を発する。
赤ん坊の身体の時の会話はテレパシーだったが、今の彼は肉声を発することが出来る。
声は子供らしいボーイソプラノだった。
「実際の子供の被験者もいるんだけど、彼らでは上手く説明出来ない事が多くてね。そこでボクが義体に入って、実際の被験者のサポートをするんだ。といっても電脳化できる訳じゃないからリモート操作なんだけど。」

ジョー達旧型のサイボーグは現代の電脳化技術に適応出来ない。
それ故のリモート操作だったが、電脳化しただけの普通の人間には彼らのようにリモート操作で義体は動かせなかった。脳神経と義体をダイレクトに繋いでいない分、反応速度にも差が出るため、身体能力の優れた彼らでないと滑らかに動かせなかったのだ。

ジョーがイワンの「声」を受けて話す。
「リモートだから僕がモニターしてもいいんだけど、子供の身体じゃ一人で出歩く訳にもいかないし。イワンが義体に入って僕がつきそうのが自然だねっていうのがこの結果なんだ。」
そう言ってジョーは面白そうな顔をして、いつもより高い位置のイワンの頭をなでた。
「やめてよ。赤ん坊の時だってそんな風に頭をなでることなんかなかったくせに。」
イワンは煩わしそうにジョーの手を軽く払い彼から少し身を離す。
「そんな事ないよ?まぁ君が起きてる時はうるさがるから必要以上に触らなかったけど。」
ジョーは行き場の無くなった手を下ろし小さく笑い声をあげた。
フランソワーズもクスクス笑う。
「そうよ。イワンが寝てる時、みんな時々覗き込んでは髪や頬を撫でたりしてたわよ。」
「君は寝てれば可愛い赤ん坊だからね。いつも守ってもらってるけど、そういう時は皆の庇護欲をそそるんだよ。でもそういえばこの前、グレートは頬をつねってたな。」
「…僕が彼のイタズラを邪魔した後でしょ…。まったく彼は…。」
自分がしらない所でも仲間達に構われていた事を知り、イワンは少々面はゆい気持ちになった。
それをジョーとフランソワーズに気取られたくなくて、上手く動かない表情筋を使ってしかめっ面を作って見せる。
「それもグレートの愛情表現さ。…ところでまだ神経系の微調整が必要みたいだね。この後ソフトの方を先に触ろうか?人前に出るためには自然な笑顔くらいは出来ないとね。」
表情はイワンの理想通りには変わらなかった。それを見たジョーは苦笑いを浮かべ午後の予定の変更を申し出た。
「顔をしかめたのはわざとだよ、ジョー。でも君の提案はいいね。せっかくだから僕も早くこの身体で外に出てみたいし。」
「人前に出るって?」
フランソワーズがジョーの言葉に反応した。
「モニターの為に色んな児童向けの施設に出向く事になってるんだ。」
イワンがそう言ってジョーのほうを伺う。
「義体を作るのは大人だからね。子供にとって何が危険か、とか繊細な所が分からないから。データを取るためにイワンに実地で体験してもらうんだ。普通の子供たちがテストを開始する時に少しでもリスクを減らすためにね。」
ジョーはそう言ってフランソワーズに笑いかけた。
「ふふっ、素敵ね。この研究所の仕事はあまり表に出ることが無いから、そうやって子供たちの役に立つ事があると嬉しいわ。」
フランソワーズも嬉しそうに笑う。
「僕らの身体と今の義体とではかなり違いがあって、簡単に技術提供と言う訳にもいかないんだけど。それでも部分的には参考になる事も多くて。秘密裏とはいえこうやって協力出来るのは僕もうれしいよ。ねぇ、イワン?」
「まぁそうだね。…話が来た時にはこんなはめになるとは思ってなかったけど。」
ジョーの問い掛けにこう言ってイワンは肩をすくめた。
そんなイワンの様子を見ていたフランソワーズが、少し不思議そうな顔で問いかけた。
「そういえばイワン、あなたどうして髪と瞳の色が本当のあなたと違うの?テスト用だって事で汎用的なデザインだから?でも顔はなんとなくあなたをイメージして作ってるみたいなんだけど。」
それを聞いたイワンがふっと笑う。それは本当に自然に零れた笑みで、今日の彼の表情の中で一番いい顔をしていた。
「今はまだ全部オーダーメイドだから、被験者の子供となるべく似せて作っているよ。だからもちろんこの顔もボクのDNA情報からシミュレーションしたデザインを素にしてる。ね、ジョー。そうだよね。」
「う、うん。そうだよ…。」
イワンに話を振られたジョーが少し照れたような顔でそう答えた。
そんなジョーの様子をみたイワンの笑みがより深くなった。
「これからモニターのために施設に出向く時にさ、もちろんボク一人じゃなくてジョーと一緒な訳じゃない?そこで彼は色んな書面に『父親』って記入しなきゃいけない。ボクは不本意だけど…ジョーはボクの父親って訳さ。」
「…不本意ってなんだよ。」
ジョーはイワンの言葉に不満そうに小さく零す。
「でさ、ジョーが父親なら、母親はフランソワーズな訳でしょ?だから髪と瞳の色をキミと同じにしてもらったのさ。こう言ったら……ジョーもまんざらでも無かったようだしね。」
そう言ってジョーの方を向いてニヤリと笑うイワンにジョーもあきらめた様な顔で笑った。
「嬉しいわ、イワン。そんな事を考えていてくれたなんて。お仕事の邪魔にならないなら私も一緒に三人で出掛けたいわ!」
二人のやり取りを聞いていたフランソワーズが、本当に嬉しそうにそう言った。
「もちろんさ。完全義体の子供を持つ親達についてのリサーチも兼ねてるんだ。最初から君の協力は考慮の上だよ。実際は父親より母親のほうが子供といる時間が長いんだから。…ジョーだけじゃ役不足なんだ。」
「本当は僕の方が付け足しなんだよね。まったく…。」
ジョーとイワンはまるで本当の親子のように話を続ける。
フランソワーズは幸せそうな顔で、そんな二人のやり取りを眺めていた。
この研究所の庭先で仲の良い親子の姿がみられるのももうすぐかもしれない。

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