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001と009がしゃべってるだけ

光の庭より前に書いてたんで、それより前の日付でひっそり公開……。
すげー未来のイワンとジョーのやり取り。
会話だけで落ちがありません。ほんとにありません(滝汗)
死にネタなので苦手な方はご覧にならぬようお願いします。

***

『Childhood's End』

続き

「お父さんが迎えに来ましたよ。」
保育士の女性が部屋の隅で本を読んでいた少年に声をかけた。
「はい。」
返事をして少年は本を閉じ顔をあげる。
少年の髪はプラチナブロンド。
淡いグリーンの瞳が女性を見上げた。
「待ったかい?」
父親とおぼしき男性が、保育士の女性に導かれて少年の前に立つ。
「本を読んでいたから大丈夫。」
そう言って少年が持ち上げた書籍はおよそ彼の外見にそぐわない科学の専門誌だった。
「何か面白い記事はあったかい?」
男性はうっすらと微笑み少年に問いかける。
「20年前、ボクが学会に提出したレポートと同じ内容の論文があったよ。」
保育士に声が届かない事を確認して少年は男性に囁きかける。
「今回発表したチームも独自にそのことに気付いたらしい。ボクのあれは普通の研究者には目の届かない所にあるからね。彼らは存在にも気付いて無いだろう。…人類の可能性もまだ捨てたモンじゃないってコトかな?」
そう言ってニコッと笑う。
「可能性はずっとあるでしょ。」
男性も笑顔で言葉を返す。
「君のその体。みんなが使ってた物よりずいぶんと性能がいいし。」
「でも…こんな子供の身体から練習する事は無いと思うんだけど。」
「段階は大事だよ。普通の人間のように自然に成長する事は出来ないけど、君がいきなり大人の身体に移るのは良くないと思うな。」
「こんななりでも地球上で一番の年寄りだよ?…ボク。」
「一番の年寄りはこっちだよ。君より10歳は上じゃ無かったっけ。」
「そうだけど…200年は生きてる僕たちに10歳程度の差なんてたいした問題じゃ無いんじゃないかな。」
「そうかな。僕は君の保護者だからね。年長者の言う事は聞いてもらわないと。」
「…だから。便宜上、君にはボクの父親の役目をしてもらってるけど、あくまでこの園に入園するためのコトだから。」
「はいはい。」
「はい、は一回でいいよ。」
「でも僕は嬉しいのさ。超能力でなんでも解決出来るスーパーベビィだった君が、擬体を使うコトに苦戦してる…って人間らしい所が見られてさ。」
「うるさいな。」
「ははっ。とにかくその、子供の擬体に慣れてもらって。…ズルはナシだよ?」
「…超能力は使ってないよ。ちゃんと体を動かす練習をしてる。」
「ある程度の年月を過ごしたら、もうちょっと大きい体に移ろう。」
男性はそう言って嬉しそうに笑う。
「その体がちゃんと使いこなせるようになったら、成人男性の体に移るんだ。…そうしたら僕もお役御免だけどね。」
「…ジョー…。」
「大丈夫だよ、君なら出来る。何たってゼロゼロナンバーサイボークの司令塔、001ことイワン・ウィスキーなんだから。」
「そうじゃなくて!今から…お役御免だなんて言わないでよ…。」
「それも大丈夫。君がひとりで生きられるようになるまで、僕は絶対死なないから。」
「…。」
「あんまり余裕があるとは思わないで欲しいけどね。…わかってるだろ?イワン。」
「うん。……君が、君の身体が…限界なのは…分かってる。」
「脳もね。脳さえちゃんと電脳化出来てれば僕も擬体になればいいんだから。でも…時代の先駆者であるゼロゼロナンバーナインの体はいまの技術にはそぐわなくてね。一番機械化率が高かった僕は、電脳や擬体が浸透する時代まで生きるコトは出来たけど。それだけだ。その恩恵を受ける事は出来ない。」


*******************


「ギルモア博士がいなくなってからも100年くらいはにぎやかだったねぇ。」
「うん。」
「その後はだんだん寂しくなって行った。」
「うん。」
「…最初はフランソワーズだったね。そして大人、グレート、ピュンマ…。」
「…まさかアルベルトがあんなに早く逝くとは思ってなかった。」
「うん…まさか最後にあんな激しいアレルギー反応を起こすなんてね…。彼はあの身体をとても大事にしてたのに。」
「まさに愛憎半々でね。」
「その気持ちが…体に伝わったと?」
「人体の神秘は未だにすべては解明されて無いんだよ。アルベルトの心に巣くっていた気持ちが体にどな影響を与えるかなんて、誰にも分かりはしないのさ。」
「…うん。その後がジェットとジェロニモか…。彼らが逝ったのは、事実上の合衆国の解散の年だったね。形骸化された国が今も残っているけれど200年前とその権力は比べ物にならない。彼らはアメリカの衰退と失墜に何を思っていたんだろう…。」
「何も…彼らはまさにアメリカの影を体現していた。だけどあの日彼らが逝ったのは偶然さ。」
「どうしてそう言い切れる?」
「僕が一緒にいたからさ。彼らはアメリカが死んだ事を知らずにいってしまったよ。」
あの日のアメリカの動きはボクは分かっていたけど他の誰も知らなかった。
ボクはあの頃予知能力を封じていた。
いつか来る別れを知りたくなかった。
そして会えなくなる彼らと一緒にいたかった。

「君は仕事中だったんじゃないか。まさに合衆国を解散させる為の。」
「そうだった。…最近は記憶もかなり曖昧になってきたんだ。この前君が付けてくれたバックアップ装置が無ければ夕べの食事も覚えてないよ…多分。」


*******************

リモートコントロールで擬体を動かす事は考えたんだ。
あの赤ん坊の身体を失う事が怖かったのもあって。
怖かった?
うん。
あれが無くなったら僕は僕で無くなると…思ったから。
実際、今僕は前ほど超能力が強くない。
精神が身体をコントロールする事に集中してるから、そっちに力を回せないんだ。
でもテレポートは出来ないけどテレパシーや小さな予知は使えてる。
今さら有事に備える訳でも無いから困らないしね。

「これで君は一人で人に交じって生きて行ける?」
「初めての事だらけだけどなんとかなるだろう。……赤ん坊の身体とはいえ長い間生きてきたんだ。」
「さすが001。それでこそ僕達の司令塔だ。」
「ちゃかすなよ009…。」


*******************


「もうすこし君につきあっていたいんだけど。…そろそろ限界かもしれないな。」
「いまの僕じゃ一人でいると警察に保護されちゃうよ?」
「そうだね、あと少しがんばらないと。せめて君が成人体の擬体を使えるようになるまでは…。」
「君は僕の『お父さん』なんだから、もう少しそばにいてよ…。」
「そんなしおらしい事を言うなんてイワンらしくないよ。」

君がその身体に留まるために、精神力を振り絞ってくれてるのは知ってる。
それが君にとってどれほどの負担なのかも。
早く君を楽にさせてあげたいと、僕も理性ではそう思ってる。
早くみんなの、フランソワーズの所に君を送ってやりたいとも思ってる。

でも。
でも、寂しいんだよ。
ジョー。
最後に残った仲間は君だけなんだ。
君がいなくなったら、僕は本当に一人になってしまう……。


*******************


「新しく始めようよ、人間のイワンを。」
「え…?」
「その体を得た君は、今の世界では普通のヒトだよ?」

僕も本当は君を一人で此処に置いていくのは心配なんだ。
君は誰よりも頭が良くて色んな事を知ってるけど、人とのつき合いには疎いところがあるからね。
だから、子供の身体から始めてもらったんだ。
普通の子供と同じと言う訳にはいかないけど、子供の目線や生活環境を経験しておくのは悪くないと思うんだよね。

「君は自分の子供時代を好きじゃないと思ったけど。」

だけど子供の頃の生活のすべてが悪かったとは思わないよ。
親には恵まれなかったし、年の近い子供には仲間はずれにされたけど、やさしくしてくれた人もいる。
あの子供時代があって今の僕がいる訳だし。

それにね、これだけ時間が過ぎると嫌だった事って結構忘れちゃうんだ。
人によるのかもしれないけど。

ごめんね。
これからの君の事が心配なのは本当だけど。
だけど、
君がいるから。
安心して
ここをはなれてそらにいけるんだ。


*******************


とにかく最後に残るのはイワンとジョーなんだろうなぁ…と思って、こんなやりとりをつらつらと考えてました。
それでジョーを見送った後にジョーの脳細胞と保存しておいたフランの卵細胞で子孫を作って時空間漂流民編につながると。


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